
勤務医として経験を積むなかで、「いつかは開業したい」と考える医師は少なくありません。
開業は理想の医療を追求できる大きなチャンスですが、同時に経営者としての責任も背負うことになります。
本記事では、医師が開業を考えるタイミングや必要な自己資金、開業医の平均年収、開業までの具体的な流れなどを解説します。
歯科医師が開業を検討する際にも、資金計画や手続きの基本的な考え方は参考になるはずです。開業を漠然と意識し始めた方は、ぜひ参考にしてください。
将来開業を考えている医師は多い

医師の求人・転職エージェント「ジョブメドレーエージェント医師」が行ったアンケート調査では、「将来、独立・開業をしようと思いますか?」という問いに対し、20代後半から30代前半の医師に開業志向が多く見られる結果が出ています。
| 年代 | はい | いいえ | わからない |
| 全体 | 21.4% | 42.7% | 35.9% |
| 〜29歳 | 30.3% | 42.4% | 27.3% |
| 30〜34歳 | 32.7% | 25.0% | 42.3% |
| 35〜39歳 | 27.3% | 43.2% | 29.5% |
| 40〜44歳 | 22.6% | 32.7% | 44.7% |
| 45〜49歳 | 23.1% | 36.9% | 40.0% |
| 50〜54歳 | 10.6% | 54.8% | 34.6% |
| 55〜59歳 | 10.6% | 63.6% | 25.8% |
| 60〜64歳 | 5.7% | 68.6% | 25.7% |
| 65〜69歳 | 0.0% | 100.0% | 0.0% |
| 70歳以上 | 0.0% | 80.0% | 20.0% |
(参照:失敗しない開業の鉄則8|医師求人・転職のジョブメドレーエージェント医師)
以前は40歳前後での開業が主流でしたが、近年は医学部入学前から開業を意識する若手医師や、定年を前に開業を決意するベテラン医師が増えている傾向にあります。
開業を希望する診療科は、内科が最も多く、全体の6〜7割を占めるとされ、次いで整形外科や精神科、眼科、小児科、皮膚科と続きます。
内科は競合が多いため、専門性をどう打ち出すかが開業の成否を分けるポイントです。
なお、医師が特定の診療科で開業すること自体に法的な規制はありませんが、保険医療機関の指定申請をはじめ、各種手続きは必須です。
医師が開業する動機は?
開業の動機として多いのは次の3つです。
- 理想の医療の追求
- 労働環境への不満
- 収入への不満
(参照:開業後年数別の開業動機 - 開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調|社団法人日本医師会)
なかでも最も多いのが理想の追求で、開業5年以内の医師の6割が、勤務医を続けるより開業して理想の医療を実現したいという思いから独立しています。
労働環境の面では、当直や長時間の拘束、診療以外の会議・書類作成といった負担が、開業10年以内の医師の3割にとって開業のきっかけとなっています。
また、年収1,000万円未満の勤務医の5割以上が給与に不満を感じているという調査結果もあり、労働時間の長さに見合わない収入への不満も、開業を後押しする要因の一つです。
(参照:給与・賃金の額に対する満足度 - 勤務医の就労実態と意識に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
医師が開業する平均年齢は?開業までに何年かかる?
日本医師会の調査によると、クリニックを新規開業する医師の平均年齢は約41.3歳です。
ただし、開業からの経過年数が短い医師ほど開業時の年齢が高い傾向にあり、開業30年超の医師の平均が37.5歳だったのに対し、開業5年以内の医師では平均44.9歳となっています。
(参照:開業年齢 - 開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調|社団法人日本医師会)
この変化は、勤務先で専門性や管理職としての経験を積んでから独立する医師が増えていることを示しているといえるでしょう。
必要な経験を積む期間や自己資金を準備する期間を踏まえると、開業の適齢期はおおむね40代〜50代前半とされています。
一方、クリニックを継ぐ「承継開業」の場合も40代が一つの目安です。
承継後に20年程度の事業継続を見込むと、譲渡側が70代前半までに引き継ぎを終える必要があるためです。
医師が開業するベストなタイミングは?
開業にベストなタイミングは、一人ひとりの状況や目標によって異なります。重要なのは、将来自分がどうありたいかを明確にイメージできているかどうかです。
近年は、開業件数自体に大きな増減はないものの、開業年齢の分布に変化が見られます。
医学部入学前から開業を意識する若手医師が増える一方、定年前のベテラン医師が「まだ診療の第一線から退くには早い」と開業を選ぶケースも増加しています。
一方で、かつて急増していた在宅専門の医院は、幅広い診療技術が求められるうえ診療報酬が下がっていることもあり、今は参入障壁が高くなっている分野です。
5年後・10年後・20年後の自分の理想像を思い描き、そこから逆算して今何をすべきかを考えることが、タイミングを見極めるうえで重要と言えます。
医師の開業に自己資金はいくら必要?
医師の開業資金は、賃貸物件であっても診療科によっては1億円程度かかるといわれ、そのうち自己資金として2,000万円程度を準備できると理想的とされています。
株式会社日本医業総研のデータによれば、自己資金準備額は1,000万〜2,000万円の間が最も多く、開業年齢の若年化にともないやや減少傾向にあるものの、なかには自己資金0円で開業するケースも見られると言います。
自己資金が0円でも、金融機関からの融資によって経営を軌道に乗せている医院は少なくありません。
低金利の環境下では、一般企業よりも医院への融資のほうがリスクが低いと見なされる傾向があるためです。
ただし、自己資金をすべて開業費用に充てるのではなく、万が一の運転資金や生活費として一部を手元に残しておくバランス感覚も重要とされています。
なお、医療機器の選定は資金繰りに大きく影響します。
たとえばCTは、安い機種でもリース料が月額50万円程度かかるとされ、それに見合う利用数があるかどうかを慎重に見極める必要があります。
医師が開業するメリット
クリニックを開業するまでのハードルは低くありませんが、開業医として経営が軌道に乗れば、勤務医時代には得られなかったいくつかのメリットがあります。
- 年収アップ・高収入を目指せる
- 自分が理想とする医療を追求できる
- 働き方を柔軟にできる
それぞれ順を追って紹介します。
年収アップ・高収入を目指せる
厚生労働省の「医療経済実態調査」によると、開業医の平均年収は勤務医の平均年収を大きく上回る水準にあります。
開業医は診療報酬から経費や税金を差し引いた額が手元に残る仕組みのため、勤務医のような固定給とは異なり、経営努力次第で収入を伸ばせる可能性があります。
もちろん、経営が軌道に乗るまでは収入が不安定になりやすい点には注意が必要です。
自分が理想とする医療を追求できる
開業医は、自院のコンセプトや診療方針、導入する医療機器などをすべて自分の裁量で決められます。
勤務医の場合、経営方針は勤務先の病院が決めるため、自分の理想を実現するには限界があります。
地域医療への貢献に力を入れたり、特定の専門分野に特化したりと、自分が目指す医療のかたちを追求できる点は、開業医ならではの大きな魅力です。
働き方を柔軟にできる
診療日や診療時間、休診日を自身の裁量で設計できることも、開業医のメリットの一つです。
当直やオンコール対応に追われがちな勤務医と比べ、ワークライフバランスを確保しやすい傾向にあります。
また、開業医には定年がないため、医師免許が有効である限り、年齢を問わず生涯現役で診療を続けられる点も特徴です。
医師が開業するデメリット

医師が開業するデメリット・注意点としては以下が挙げられます。
- 勤務医時代にはなかった業務が増える
- 収入が不安定になるリスクがある
- 経営の知識とスキルが求められる
開業医は経営の全責任を自分一人で負う立場になります。
診療だけでなく、資金繰りやスタッフの労務管理、集患のための広報活動など、勤務医時代にはなかった業務を担わなければならず、精神的な負担も大きくなりがちです。
収入面では、患者数が収益に直結するため、集患が計画通りに進まなければ収入が不安定になるリスクもあります。
経営の知識やスキルが不足していたり、投資の回収が思うように進まなかったりすると、廃業に追い込まれる可能性もゼロではありません。
開業医の平均年収はいくら?儲からないって本当?
厚生労働省の医療経済実態調査によると、入院診療収益を持たない一般診療所(個人)の平均損益差額は3,141万円とされています。
(参照:一般診療所(個人)(集計2) - 第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|厚生労働省)
さらに、医療法人化した場合は、有床診療所で約3,438万円とされ、個人開業よりも高くなる傾向が見られます。(無床診療所は約2,578万円)
「開業医は儲からない」といわれることもありますが、これは運営コストや税金を差し引いた実態を考慮せずに、額面上の医業収入だけで判断してしまうケースが多いためと考えられます。
開業医で年収5,000万円を実現するのは容易ではありませんが、診療科や地域、経営規模によっては、勤務医の年収を大きく上回る水準を目指すことも可能です。
開業するかどうかを判断する際は、単純な年収比較だけでなく、働き方や経営の負担も含めて総合的に検討することが重要です。
関連記事:開業医の平均年収はいくら?医師が開業して年収を上げるポイントと対策を解説
クリニック開業の成功率はどのくらい?
帝国データバンクの調査によると、2021年に休廃業・解散した診療所(クリニック)は471件、倒産は22件でした。
休廃業・解散の件数は倒産の21.4倍にのぼり、資金繰りに困きゅうしての倒産よりも、後継者不在や経営者の高齢化などを理由に事業を畳むケースの方が圧倒的に多いことがわかります。
(参照:医療機関の休廃業・解散、倒産の17倍超|株式会社帝国データバンク)
開業医の廃業や倒産の件数自体は増加傾向にあり、医師が開業に失敗するケースが実際に存在することは事実です。
しかし、開業医は一般法人とは異なり、経営を継続しやすい要因が複数あるとされています。
- 医院開業が資金の融資を比較的受けやすいこと
- 自身の裁量に合った診療を行えること
- 地域医療に貢献しやすいこと
など
クリニック開業を成功させるためには、立地選定や資金計画、経営知識の習得など、地道な準備を重ねることが失敗を避けるために欠かせません。
医師が開業するのに必要なスキル・資格はある?
クリニックを開業する場合、医師免許さえあれば、年齢や経験を問わず開業医になることができ、新たに取得が必須となる資格はありません。
ただし、開業医になると院長一人が診療の責任を負う立場になるため、臨床経験を積み重ね、他院との差別化につながる専門医としてのスキルを身につけておくことが望ましいでしょう。
また、開業医は「個人事業主」として、日々の診療に加えて経営全般を担う立場でもあります。
マーケティングによる集患施策やスタッフのマネジメント、行政機関への各種届出など、業務は多岐にわたるため、経営者・管理者としての意識と知識を身につけておくことも重要です。
医療経営士や医業経営コンサルタントといった資格、あるいは専門医の資格を取得しておくと、自院の専門性をアピールする材料にもなります。
医師が開業するまでの流れは?必要な準備と手続き
医師が開業するまでの流れは、大きく分けて次のステップがあります。
- 物件を探す
- 開業資金を調達する
- 医療機器や設備を整える
- 内装工事を手配する
- スタッフを採用する
- 広告宣伝して集患する
- 各種行政手続きを行う(医師会への加入など)
開業準備には少なくとも1年以上かかるとされているため、余裕を持ったスケジュールで計画を立てることが大切です。それぞれのステップについて順を追って解説します。
1.物件を探す
まずは人口動態や競合状況を調べる「診療圏調査」を行い、開業に適したエリアを絞り込みます。
人口規模や年齢構成、競合クリニックの数、交通アクセス、将来的な発展性などを踏まえて立地を選定しましょう。
物件のタイプには、自由度は高いが費用負担も大きい戸建てと、初期費用を抑えられる分、内装や設備の自由度が下がるビルテナントがあり、資金計画や経営方針に応じて選ぶことが重要です。
2.開業資金を調達する
自己資金だけでまかなうのが難しい場合は、金融機関からの融資で不足分を補うのが一般的です。
- 民間の銀行
- 信用金庫
- 独立行政法人福祉医療機構の医療貸付事業
- 日本政策金融公庫の新規開業支援資金
- 地方自治体の制度融資
などが選択肢に挙げられます。
事業計画書をしっかりと準備し、収支の見通しを明確にしておくことが融資審査を通すポイントです。
3.医療機器や設備を整える
診療科に応じて必要な医療機器や器具・設備を選定します。
開業時にすべてをそろえようとすると過剰投資になりやすいため、まずは必要最低限の機器を確保し、患者数や診療状況に応じて段階的に拡充していく方法も現実的です。
医療機器は高額になりやすいため、初期費用を抑えられるリース契約も検討するとよいでしょう。
4.内装工事を手配する
内装は、患者に与える印象やスタッフの業務効率にも関わる重要な要素です。
関連法令を踏まえつつ、想定する患者層に合ったデザインと、診療がスムーズに行えるようなレイアウト・動線を考えて依頼しましょう。
医療施設の実績が豊富な業者を選び、複数社から相見積もりを取ったうえで、費用やスケジュール、提案内容を比較して決めることが重要です。
5.スタッフを採用する
看護師や事務スタッフの採用にあたっては、必要な人数や雇用形態をあらかじめ計画しておく必要があります。
開業当初は患者数の変動が読みにくいため、まずはパート中心で採用し、経営が軌道に乗ってから常勤に切り替えていく方法も一つの選択肢です。
人件費を抑えられるだけでなく、採用後のミスマッチにも柔軟に対応しやすくなります。
6.広告宣伝して集患する
開業を成功させるには、開院前の段階から集患のための広告宣伝に取り組む必要があります。
特に近年は、ホームページやSNSを通じた情報発信が集患の中心的な手段になっており、専門性を打ち出した病気の解説記事などを充実させることが、患者に選ばれるきっかけになります。
自院だけで対応が難しい場合は、開業支援や集患に詳しいコンサルタントの活用も検討するとよいでしょう。
7.各種行政手続きを行う(医師会への加入など)
開業にあたっては多岐にわたる行政手続きが必要です。
- 保健所への診療所開設届
- 地方厚生局への保険医療機関指定申請書
- 税務署への開業届出書
など
あわせて、地区の医師会への加入も検討しましょう。
医師会に加入しなくてもクリニックの開業自体は可能です。しかし、加入すれば自治体の予防接種や健診事業の委託を受けられたり、地域の医師とのネットワークを築けたりするメリットがあります。
医師賠償責任保険や医師年金制度に加入できる点も、医師会加入の利点の一つです。
医師の開業成功にはインターネット集客が重要
最近の開業は、ホームページをいかに活用するかが集患の成否を大きく左右します。
かつて主流だった駅看板やチラシは記載内容に制限があり、専門性を強く打ち出すことが難しいものでした。
一方、ホームページであれば比較広告などの広告規制に触れない範囲で、自院の強みを積極的にアピールできます。
例えば、専門とする病気について詳しく解説する記事をこまめに更新する方法が効果的です。
患者は複数の医院のホームページを比較し、自分の症状について詳しく書かれているところを選ぶ傾向があり、これは高齢者層にも広がりつつある傾向です。
また、内科系のように競合が多い診療科では、あえて診療範囲を絞り込み、特定の患者層をターゲットにすることで差別化を図る戦略も有効とされています。
開業前の内覧会と組み合わせることで、周知効果をさらに高められるでしょう。
クリニック・病院の集患は株式会社Acsportへお任せください
開業後の集患を成功させるには、専門的なノウハウを持つパートナーに相談するのも一つの方法です。
株式会社Acsportは、病院・クリニックのホームページ制作を専門とするWeb制作会社で、患者への情報提供や集客支援を通じて医療機関の経営をサポートしています。
Acsportでは、医療広告ガイドラインや薬機法に準拠したうえで、各クリニックや病院の強みを引き出すホームページを制作しています。
検索されやすいサイト構造やSEO対策を取り入れることで、新規患者からの問い合わせや予約につながる仕組みづくりに力を入れているのが特徴です。
ホームページ制作だけでなく、運用後の集患対策についても相談できる体制が整っているため、開業後の集患に不安がある方はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
医師の開業は、理想の医療を追求できる魅力的な選択肢である一方、経営の全責任を負うことになるため、綿密な準備が欠かせません。
開業の適齢期は40代から50代前半とされていますが、自己資金の準備状況やキャリアプランによって最適なタイミングは人それぞれ異なります。
物件探しから資金調達、行政手続きまで、開業までの道のりは多岐にわたります。
開業医の年収は勤務医を上回る傾向にあるものの、集患が計画通りに進まなければ経営が不安定になるリスクもあるため、早めの情報収集と入念な事業計画を心がけましょう。
開業時の集患はぜひ株式会社Acsportにお任せください。

【この記事を書いた人】
株式会社Acsport 代表取締役 竹田 忠功
船井総合研究所で中小企業の経営支援に従事し、わずか2年でシニア経営コンサルタント等へ昇格。その後Acsportを創業。
医療業界に特化したWebマーケティングを展開し、150院以上の病院・クリニックを支援。医療広告ガイドラインを熟知し、SEOやMEOを駆使して「検索順位1位」「開院3ヶ月で1日150名来院」など、結果に直結する圧倒的な集患コンサルティングに定評がある。