
「開業医は勤務医よりも稼げる」と耳にしたことがある医師の方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、開業医の年収は診療科や立地、経営方針によって大きく変わり、一概に儲かるとは言い切れないのが実情です。
本記事では、厚生労働省の統計データをもとに、開業医の平均年収や勤務医との違い、年収アップに影響するポイントを解説します。
開業を検討している医師の方はもちろん、開業後の収益改善を目指している方も、ぜひ参考にしてください。
開業医の平均年収はいくら?

厚生労働省「第24回医療経済実態調査」によると、入院診療収益を持たない一般診療所(個人)の平均損益差額は3,141万円です。
(参照:一般診療所(個人)(集計2) - 第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|厚生労働省)
前回調査(令和3年)の2,875万円から約300万円増加しており、近年はやや上昇傾向にあります。
損益差額とは、医業収益から人件費や薬剤費などの支出を差し引いた、経営上の利益にあたる数値です。ただし、この損益差額はそのまま院長の手取り収入になるわけではありません。
仮に損益差額が3,100万円の場合、所得税・住民税・社会保険料で約35%、借入の返済・投資などに500〜600万円を差し引くと、実際の手取りはおよそ1,400万円前後が目安とされています。
借入が少なければ1,500万円を超えることもあれば、開業時の投資額が大きい場合は1,200万円台にとどまることもあります。
関連記事:医師が開業する流れは?開業医の平均年収やメリット・デメリットを解説
【診療科別】開業医の平均年収
開業医で一番儲かる科はどこか、気になる方も多いでしょう。診療科によって収益には大きな差があります。
ある調査では、産婦人科が約4,892万円ともっとも高く、次いで小児科が約4,185万円、眼科が約3,393万円と続きます。
一方、精神科は約2,179万円ともっとも低い水準です。
(参照:開業医の平均年収は?勤務医との差や年収1億円を目指す対策/内科開業医の例を解説|エムスリーデジカル)
皮膚科や眼科は自由診療との相性がよく単価を上げやすい一方、精神科は医療機器やスタッフ数が少なくても運営できるため利益率自体は高いものの、患者1人あたりの診療時間が長くかかるため、利益総額は小さくなりやすいという傾向があります。
【地域別】開業医の平均年収
開業医の年収は、クリニックの所在地によっても差が生じます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにしたデータでは、福井県・山口県・徳島県といった地方の県で平均年収が高く、山形県・山梨県・福岡県では低めという結果が出ています。
これは、地方では競合する医療機関が少なく、患者の選択肢が限られるぶん効率的に集患しやすいためと考えられます。
一方、東京都や神奈川県といった首都圏は、全国平均を下回る傾向にあります。人口は多いものの競合クリニックの数も多いため、都市部では差別化戦略と集患力がより重要になります。
(参照:令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省)
開業場所を選ぶ際は、地域ごとの医師の偏在状況や競合クリニックの分布を事前に調査したうえで判断することが大切です。
開業医と勤務医の平均年収の違い
勤務医は病院などに雇用され、安定した給与を得られる一方、開業医の収入は診療報酬や患者数、経営の巧拙に大きく左右されることが特徴です。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和6年)」によると、10人以上の医療機関で働く勤務医の平均年収(額面)は約1,338万円です。
(参照:賃金構造基本統計調査 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省)
ここから税や社会保険料を差し引いた実際の手取りは、およそ800万〜1,050万円が目安です。
一方、「医療経済実態調査」を基にした推計では、病院勤務医の平均年収は約1,461万円ともされています。
(参照:一般病院 開設者別(集計1) - (24)職種別常勤職員1人平均給料年(度)額等 - 第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告|厚生労働省)
勤務医のおよそ1.6〜1.8倍の水準になると考えられますが、これはあくまで平均値であり、一部の高収益クリニックによって数値が押し上げられている面も予測できます。
開業医は経費を自己負担するうえ、経営がうまくいかなければ収入が平均を大きく下回ることもあるため、単純に「開業したほうが稼げる」と言い切れるものではないことに注意が必要です。
開業医の年収アップに影響するポイント
開業医の年収は、単に患者数や診療時間だけで決まるものではなく、複数の要因が複雑に絡み合っています。
- 診療科目
- 開業場所・立地
- 自由診療があるか
- 法人化による節税
- 患者数、診療単価、スタッフの人件費
ここでは、年収に影響する主なポイントを5つ紹介します。
診療科目
診療科によって、収益構造やコスト構造は大きく異なります。
皮膚科や眼科は自由診療との親和性が高く、美容治療やレーザー手術などを取り入れることで単価を上げやすい科目です。
精神科は医療機器やスタッフ数が少なくても運営できるため利益率自体は高い一方、内科や小児科は保険診療中心で単価が低く、患者数の確保が収益維持のポイントとされます。
地域の人口構成や競合状況を踏まえ、自身の専門性や地域のニーズに合った診療科を選ぶことが重要です。
開業場所・立地
立地は、集患力とコストの両方に影響を与えます。
都市部は人口が多く患者を集めやすい一方、地価や人件費、施設コストが高くなりやすい傾向があります。
地方や郊外は競合が少ない分、地域のニーズを的確に捉えれば高収益も期待できますが、人口減少などが集患を制約する可能性もあります。
開業前には診療圏調査を行い、適切な立地を見極めることが欠かせません。
自由診療があるか
自由診療は保険診療に比べて診療単価を数倍に高められるケースもあり、少ない患者数でも利益を確保しやすいのが特徴です。
美容皮膚科や予防医療、アンチエイジング治療などを組み合わせることで、売上の底上げが期待できます。
ただし、広告規制や価格設定の難しさなど導入のハードルもあるため、地域のニーズや自院のブランディングを踏まえたうえで、自由診療の比率をどこまで高めるか慎重に判断する必要があります。
法人化による節税
一定の利益規模に達したクリニックでは、法人化によって節税効果を得られる場合があります。
個人開業では所得税が累進課税で課され、所得が増えるほど税率が上がりますが、法人化すると役員報酬として所得を分けたり、家族に給与を支給して所得を分散したりすることで、可処分所得を増やせる可能性があります。
一方で、法人化すれば法人維持費や事務手続きの負担も増えるため、課税所得の規模を見極めたうえで、税理士などの専門家に相談しながら判断することをおすすめします。
患者数、診療単価、スタッフの人件費
クリニックの収益は、基本的に「患者数×診療単価−人件費や設備費などのコスト」で決まります。
安定した収入を得るためには、口コミやWeb発信を通じた集患と、スタッフ配置や給与水準の最適化を両立させることが重要です。
電子カルテや予約システム、自動精算機といったITツールを活用すれば、業務効率化と人件費の抑制を同時に進めやすくなります。
医師が開業するメリット

開業医には、勤務医にはない魅力があります。
- 高収入を目指せる
- 柔軟な働き方ができる
- 運営方針を自分で決められる
- 一緒に働く仲間を自分で決められる
ここでは主なメリットを4つ紹介します。
高収入を目指せる
開業医は、経営が順調であれば収入を大きく伸ばせる可能性があります。
勤務医時代よりも労働時間を抑えつつ、収入を増やせるケースも珍しくありません。
ただし、収益は経営努力に左右されるため、必ずしも高収入が保証されているわけではない点には注意が必要です。
柔軟な働き方ができる
開業医は勤務先のルールに縛られることなく、診療方針や診療時間を自分の考えに基づいて決められます。
理想とする治療スタイルやワークライフバランスを実現しやすく、自分のペースで診療を続けられる点は、勤務医にはない大きな魅力です。
運営方針を自分で決められる
クリニックの運営方針をすべて自分で決められることも、開業医の強みです。
理想とする医療サービスの提供が可能になるほか、患者満足度を高めやすくなり、それが収益の向上にもつながっていきます。
一緒に働く仲間を自分で決められる
開業医は、自分にとって働きやすいと感じる人材を採用できます。
院内の人間関係のストレスが比較的少なく、自身の方針に共感してくれるスタッフとチームを築くことで、理想的な職場環境をつくりやすくなります。
医師が開業するデメリット
開業医には多くの魅力がある一方、勤務医にはなかった負担やリスクも伴います。
- 経営リスクと経営する負担がある
- 収入が不安定になる
- 責任が重くなる
- 業務量が増える可能性がある
ここでは主なデメリットを4つ紹介します。
経営リスクと経営する負担がある
開業医は、診療に加えて経営やマーケティング、スタッフのマネジメントなど、多岐にわたる業務をこなさなければなりません。
診療に専念しにくくなる場面も出てくるため、経営者としての意識と時間配分が求められます。
収入が不安定になる
経営が思うように進まない場合、患者数が伸び悩み、収入が安定しないリスクがあります。
開業時には多額の借入を抱えることも多く、返済や運転資金の確保に苦労するケースも少なくありません。
責任が重くなる
開業医は経営者としての責任も負う立場です。
万が一医療事故が発生した際には、その責任を問われるのは開業医自身であり、トラブル対応の矢面に立たなければならない点は、心理的な負担にもつながります。
業務量が増える可能性がある
経営に関する複雑な手続きや金融機関との折衝、スタッフ管理など、勤務医にはなかった業務が増えるため、全体的に多忙になりやすい傾向があります。
結果としてプライベートの時間が削られることも少なくありません。
開業医が経営利益や収入を上げるための対策

年収を上げるには、患者数を増やす対策と、患者一人あたりの収益を高める対策、経費を削減する対策をバランスよく組み合わせることが重要です。
- 請求管理を徹底して請求ミスを防ぐ
- 人件費や業務内容をブラッシュアップして経費を削減する
- 適切な広告や宣伝を行って患者数を増やす
- Web上での認知度向上を図って患者数を増やす
ここでは具体的な4つの取り組みを紹介します。
請求管理を徹底して請求ミスを防ぐ
診療報酬の請求漏れなどのミスは、収益を目減りさせる要因になります。
スタッフの基礎知識を高め、カルテの記載方法を統一することで、入力ミスや請求漏れを防ぎやすくなります。
電子カルテシステムを導入すれば、診療内容を正確に記録しやすくなり、レセコン一体型であれば請求業務の効率化にもつながります。
未払い金の管理と回収も、収益確保のために欠かせません。
未収金のリスクが高い患者の情報を把握し、支払いが難しい患者には国民健康保険一部負担金減免制度などの公的な支援制度を案内するとともに、カード決済やキャッシュレス決済を導入することで、未払いの発生自体を防ぎやすくなります。
人件費や業務内容をブラッシュアップして経費を削減する
経費削減の代表的な手段が、人件費の見直しです。
予約・問診システムや自動精算機を導入すれば、事務スタッフの対応業務を効率化でき、電子カルテの活用によって紙資料を探す手間も削減できます。
あわせて、適切な採用基準を設けて質の高い人材を確保し、研修制度を整えてスタッフを育てることも、長期的な経費削減につながります。
そのほか、ペーパーレス化による省エネ対策や、外部委託している業務の内容を見直して不要な契約を整理することも、経費削減の有効な手段です。
清掃業務など複数の事業所で費用を比較し、委託範囲を必要最小限に絞ることで、無理なくコストを抑えられます。
適切な広告や宣伝を行って患者数を増やす
患者数の増加は、収益アップに直結します。
チラシ配布や看板広告、地域紙への掲載など、地元住民に直接アピールする方法は、特に開業初期の集患に効果的です。
あわせて、他の病院や介護施設と連携し、患者を紹介し合う仕組みを構築することも、安定した患者数の確保につながります。
また、好条件の立地で開業することや、最新の医療技術・設備を導入して他院との差別化を図ることも、集患力を高める重要な要素です。
立地の良い物件は初期費用が高くなりがちなため、長期的な収益を見据えたうえで費用対効果を慎重に検討する必要があります。
Web上での認知度向上を図って患者数を増やす
近年は、ホームページやSNSを活用した情報発信が集患の中心的な手段になっています。
院内の様子や健康情報、専門とする病気の解説などをこまめに更新することで、クリニックの認知拡大と患者からの信頼獲得につながります。
既存患者に対してインフルエンザ予防接種の時期などにお知らせを送るなど、リピート来院を促す取り組みも有効です。
患者の満足度を高める工夫も、Web上の評判を通じて新規患者の獲得に波及します。
問診票にアンケート欄を設けて意見を収集し、サービス改善に活かすことで、口コミやオンラインでの評価向上にもつながっていくでしょう。
クリニック・病院の集患は株式会社Acsportへお任せください
Web集客の重要性が高まる一方、自院だけでホームページの制作や運用まで手が回らないというケースも多いのではないでしょうか。
株式会社Acsportは、病院・クリニックのホームページ制作を専門とするWeb制作会社で、患者への情報提供と集客支援を通じて医療機関の経営をサポートしています。
医療広告ガイドラインや薬機法に準拠したうえで、各クリニック・病院の強みを引き出すホームページを制作し、検索されやすいサイト構造やSEO対策を取り入れています。新規患者からの問い合わせや予約につながる仕組みづくりに力を入れているのが特徴です。
集患対策に課題を感じている方は、ぜひ一度Acsport Medicalへご相談ください。
まとめ
開業医の平均年収は、統計の算出方法によって幅がありますが、損益差額ベースで3,000万円台、税や社会保険料を差し引いた手取りベースでは1,400万円前後が一つの目安です。
勤務医と比べると高い水準にあるものの、診療科や立地、自由診療の有無、法人化の状況など、さまざまな要因によって実際の収入は大きく変動します。
開業医として年収を伸ばすためには、患者数の増加、患者一人あたりの収益向上、経費削減という3つの視点から対策を積み重ねることが欠かせません。
経営を「感覚」ではなく数値で捉え、地域に信頼される医院づくりを進めながら、無理のない範囲で収益改善に取り組んでいきましょう。

【この記事を書いた人】
株式会社Acsport 代表取締役 竹田 忠功
船井総合研究所で中小企業の経営支援に従事し、わずか2年でシニア経営コンサルタント等へ昇格。その後Acsportを創業。
医療業界に特化したWebマーケティングを展開し、150院以上の病院・クリニックを支援。医療広告ガイドラインを熟知し、SEOやMEOを駆使して「検索順位1位」「開院3ヶ月で1日150名来院」など、結果に直結する圧倒的な集患コンサルティングに定評がある。