
医療現場のデジタル化が進むなか、「電子カルテ」の導入は多くのクリニック・病院にとって避けて通れないテーマとなっています。
しかし、電子カルテには導入形態やレセコンとの連携方法などによっていくつかの種類があり、「自院にはどのタイプが合うのか」と悩む方も少なくありません。
本記事では、電子カルテの基礎知識から代表的な4つの分類、導入するメリット・デメリット、導入までの流れ、さらにメーカーのシェアランキングまで、わかりやすく解説します。
電子カルテとは?

電子カルテとは、これまで医師が手書きで記入していた「紙カルテ(診療録)」を電子データに置き換え、パソコンやタブレットなどで編集・管理し、データベースに記録するシステムのことです。
電子カルテは大きく分けて「クリニック・診療所向け」と「病院向け」があり、入院機能や部門機能の有無、レセプトコンピューター(レセコン)との連動性などが異なります。
そのため、導入時には自院の形態に合わせた選定が必要です。
現在は新規開業する医療機関の多くが開業と同時に電子カルテを導入しており、医療現場の標準的な仕組みになりつつあります。
電子カルテと紙カルテの違い
電子カルテと紙カルテの違いを項目別に整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 紙カルテ | 電子カルテ |
| 記入方法 | 手書きで記入 | パソコンやタブレット等で入力 |
| 保存方法 | 紙媒体で保管 | サーバーなどに電子データとして保管 |
| 共有の可否 | 一度に一人まで | 複数のスタッフが同時に閲覧・共有できる |
| 読みやすさ | 筆跡によって読みにくい場合がある | 誰が見ても均一に読みやすい |
| 保管場所 | 法令遵守のための物理スペースが必要 | 物理的な保管スペースはほぼ不要 |
| 情報の反映 | 記載した場所でしか確認できない | 入力後、院内の各端末に即座に反映される |
紙カルテは初期コストが低く操作の習得も不要という利点がある一方、記録の検索性や情報共有、診療報酬改定への対応といった面では電子カルテに劣る傾向があります。
電子カルテへの移行を検討する際は、こうした違いを踏まえたうえで、業務フロー全体の変化を見据えた計画を立てることが重要です。
電子カルテの原則(電子保存の三原則)
電子カルテを導入・運用する医療機関は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に定められた次の3つの原則を守る必要があります。
- 真正性
- 見読性
- 保存性
真正性とは、正当な権限を持つ人が記録し、第三者から見て作成の責任の所在が明確であり、故意や過失による虚偽入力・書き換え・消去・混同が防止されていることです。
見読性は、電子データとして保存された内容を、必要に応じて肉眼で見やすい状態に表示・出力できることを言います。
保存性は、記録された情報が、法令等で定められた期間にわたり真正性を保ちながら、見読可能な状態で保存されていることです。
これら三原則は、電子カルテを安全に運用するうえで、医療機関が理解しておくべき基本的なルールです。
また、厚生労働省が策定したガイドラインに基づくもので、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」として常に改訂・更新されています。
(参照:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン|厚生労働省)
クリニックや病院での電子カルテの普及率は?
厚生労働省の資料によると、電子カルテの普及率は上昇傾向にあります。
一般病院全体では約65.6%(2023年医療施設調査)で、400床以上の病院では93.7%とほぼすべての施設で導入が完了しています。200~399床の病院では79.2%(1,207施設中956施設が導入)、200床未満の病院では59.0%となっています。
一方、一般診療所では55.0%にとどまっており、施設規模や種別によって普及状況に差があるのが現状です。
(参照:電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスの普及について(1) - 電子処方箋・電子カルテの目標設定等について|厚生労働省)
また、2025年11月に公表された中央社会保険医療協議会の調査(医療DX推進体制整備加算の届出施設を中心としたサンプル調査)では、病院77.7%、診療所71.0%という導入率も報告されています。
調査対象や時期が異なるため単純比較はできませんが、いずれの調査でも電子カルテの導入が右肩上がりで進んでいることがうかがえます。
(参照:(2) 電子カルテシステムの導入状況(調査票問6) - 令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和7年度調査)の報告案について|厚生労働省)
こうした流れを後押しする形で、政府は2030年12月末までに電子カルテの普及率を約100%とする目標を法令上定めました。
目標達成に向けて、デジタル庁と厚生労働省が「標準型電子カルテ(導入版)」の開発を進めており、2026年度中の完成を目指しています。
今後は小規模病院やクリニックでの導入がさらに重要視されていく見込みです。
(参照:医療法等の一部を改正する法律の成立について(報告)|厚生労働省)
電子カルテの種類とは?代表的な4大分類
電子カルテは、大きく以下4つの観点で分類できます。
- 導入形態(クラウド型・オンプレミス型)
- レセコン(電子カルテ一体型・分離型)
- 診療科(汎用タイプ・特化タイプ)
- 施設規模(クリニック・病院)
それぞれ対応する医療機関の状況やおすすめのタイプが異なるため、自院の運用スタイルに合わせて比較検討することが大切です。
ここから、4つの分類ごとに特徴とおすすめのポイントを解説します。
①導入形態(クラウド型・オンプレミス型)
電子カルテは、システムの設置場所によって主に「クラウド型」「オンプレミス型」に分けられます(両者を組み合わせた「ハイブリッド型」もあります)。
| 項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
| サーバー | メーカーのデータセンターを利用 | 院内に専用サーバーを設置 |
| 利用できる場所 | インターネット環境のある場所 | 基本は院内のみ |
| カスタマイズ性 | 基本なし、拡張性は連携次第 | 自由度が高い |
| 価格形態 | サブスクリプション型が中心 | パッケージ価格(数年ごとに更新が必要な場合あり) |
| サポート形態 | オンライン対応が多い傾向 | 導入初期のサポートが手厚い傾向 |
クラウド型は初期費用を抑えやすく、場所を問わずカルテを参照できる点が特長です。新規開業や、院外・在宅診療でもカルテを確認したい医療機関に向いています。
一方、オンプレミス型は院内に専用のサーバーを設置して運用する形式で、ネットワーク環境に左右されにくく、既存の医療機器との連携実績が豊富な特長があります。そのため、医療機器連携や安定稼働を重視する医療機関にはオンプレミス型がおすすめです。
②レセコン(電子カルテ一体型・分離型)
電子カルテとレセプトコンピューター(レセコン)の組み合わせ方には、「一体型」と「分離型(ORCA連動型など)」があります。
一体型は、カルテ機能と請求業務を1つのシステムで完結できるため、初期費用・月額費用を1社分にまとめられるのがメリットです。
カルテ入力の内容がそのままレセプトに反映されるため、入力の手間や転記ミスを減らしたい医療機関に向いています。
分離型は、日本医師会が提供する「ORCA(日医標準レセプトソフト)」など、既存のレセコンと連携させて運用する方式です。
月額費用を抑えられるケースがある一方、2システム分の保守費用や連携調整のコストがかかる点には注意が必要です。
現在利用しているレセコンを継続して使いたい医療機関には分離型が適しています。
③診療科(汎用タイプ・特化タイプ)
電子カルテの多くは、診療科を問わず利用できる「汎用タイプ」です。
処方内容をテンプレート化したり、検査機器をオプションで連携したりすることで、幅広い診療科に対応できます。
一方、産婦人科・眼科・美容医療(自由診療)など、特殊な検査や記録様式が求められる診療科では、専門の検査機器との連携や専用の記録テンプレートを備えた「特化タイプ」の電子カルテが利用されるケースもあります。
汎用タイプでは物足りなさを感じる診療科の場合、特化タイプの導入も選択肢のひとつです。
導入前には、自院の診療スタイルと照らし合わせながら、デモ操作で使い勝手を確認することが推奨されます。
④施設規模(クリニック・病院)
電子カルテは、対象とする施設規模によっても「クリニック向け」と「病院向け」に分けられ、病院向けはさらに「中小規模」と「大規模(目安200床以上)」に分類されます。
クリニック向けの電子カルテは、特別な知識がなくても操作しやすいインターフェースを採用しているものが多く、診療予約やWeb問診など周辺業務を効率化する機能を備えた製品も豊富です。
月額数万円程度で利用できる安価なクラウド型が多いのも特徴です。
病院向けの電子カルテは、看護・リハビリ・検査など各部門との連携を前提とした支援機能を搭載していることが多く、安定稼働やセキュリティが求められる場面が多いことから、オンプレミス型が採用されるケースも目立ちます。
大規模病院になるほど、診療科や業務フローの複雑さに応じて個別カスタマイズされた製品が主流です。
クリニックや病院が電子カルテを導入するメリット

電子カルテの導入は、単なるペーパーレス化にとどまらず、業務の効率化や医療の質の向上など、多くのメリットをもたらします。
- 大幅な業務効率化
- 検査結果や画像データの一元管理
- 物理的なスペースの削減
- 伝達ミスなどヒューマンエラーの防止
- 患者満足度の向上
- 情報共有と地域連携がスムーズ
電子カルテを導入することで、紙カルテを探す・運ぶといった物理的な作業がなくなり、会計時間の短縮や文書作成の業務効率化にもつながります。
また、血液検査やX線画像などのデータを患者情報とひも付けて一元管理でき、手書き文字の判読が不要になることで、テンプレート機能などによって記載漏れや重複処方といったミスを未然に防ぐことが可能です。
そのほか、医師法第24条により、カルテは診療完了日から5年間の保存が義務付けられていますが、電子化によって保管スペースの確保という負担を解消できるのもメリットです。
クリニックや病院が電子カルテを導入するデメリット
メリットが多い一方で、電子カルテの導入には事前に理解しておくべきデメリットもあります。
- 操作の習熟に教育コストがかかる
- 停電やシステム障害時にリスクがある
- 運用変更と統制のコストがかかる
- 導入や運用コストがかかる
電子カルテはスタッフ全員が操作に慣れるまで一定の期間が必要で、新しいスタッフが入職するたびに研修コストが発生します。
さらに、電子カルテにはシステムの導入・運用費用が必要なうえ、運用には記載内容のばらつきを抑えるため、運用時のルール統一やテンプレートの整備が求められます。
費用負担を軽減するために、「医療提供体制設備整備交付金」や「IT導入補助金」など各種補助金の活用を検討するとよいでしょう。
電子カルテ導入の流れ
電子カルテの検討から稼働開始までは、一般的に4~6ヶ月程度かかるとされています。
開業準備中の場合は、開業日の半年前を目安に準備を始めるとスムーズです。主な流れは以下のとおりです。
- 導入目的を整理する:自院がなぜ電子カルテを導入するのか、課題や狙いを明確にする
- 電子カルテのタイプを比較する:クラウド型・オンプレミス型など、自院の運用スタイルに合ったタイプを選ぶ
- 費用を比較する:初期費用・月額費用を複数メーカーで比較し、総コストを把握する
- サポート内容を確認する:導入時・運用後のサポート体制や対応形態を確認する
- 製品を選ぶ:比較・検討した内容をもとに、自院に合った製品を選ぶ
- 試験運用する:本稼働前にリハーサルを行い、運用プロセスや問題点を洗い出す
- 本稼働開始:稼働開始後は各部署からのフィードバックを集め、運用を最適化していく
【最新版】病院の電子カルテメーカーのシェアランキング
電子カルテメーカーの導入シェアの参考として、日経メディカル開業サポートが2024年に実施した、医師774人を対象とした調査結果を紹介します。
| 順位 | メーカー名 | 製品名 | 導入形態 |
| 1位 | WEMEX | Medicomシリーズ | オンプレ型/クラウド型 |
| 2位 | エムスリーデジカル | M3 DigiKar | クラウド型 |
| 3位 | ダイナミクス | Dynamics | オンプレ型 |
| 4位(同率) | ユヤマ | BrainBoxシリーズ | オンプレ型/クラウド型 |
| 4位(同率) | ビー・エム・エル | Qualisシリーズ | オンプレ型/クラウド型 |
| 6位 | メドレー | CLINICS | クラウド型 |
| 7位 | DONUTS | CLIUS | クラウド型 |
| 8位(同率) | 富士通Japan | HOPEシリーズ | オンプレ型/クラウド型 |
| 8位(同率) | エムスリーソリューションズ | TOSMECシリーズ | オンプレ型 |
| 10位(同率) | WEMEXヘルスケアシステムズ | Hi-SEEDシリーズ | オンプレ型/クラウド型 |
| 10位(同率) | エムアイユー | Dopanet Doctors | オンプレ型 |
(参照:第24回 【医師774人に聞いた】電子カルテ導入シェアランキング2024速報!|日経メディカル)
このランキングを見ると、1位のWEMEXをはじめ、現時点ではオンプレ型・クラウド型の製品が中心を占めていることがわかります。
特にWEMEXの「Medicom」シリーズは、レセコン開発の実績を背景に一般診療所での導入が進んでおり、大きなシェアを獲得しています。
富士通Japanの「HOPE」シリーズは、中堅~大規模病院向けの実績が豊富なメーカーとして知られています。
おすすめの電子カルテシステム
ここでは、施設規模別におすすめの電子カルテシステムを紹介します。
より詳しいメーカー情報は、関連記事「病院・クリニックの電子カルテメーカー15選!導入のメリット・デメリット、選び方を解説」もあわせてご覧ください。
大規模病院向け

大規模病院は診療科や業務フローが複雑なため、オンプレミス型で個別カスタマイズされた製品が主流です。
- HOPE LifeMark-HX(富士通)
- MegaOak/iS(NEC)
HOPE LifeMark-HXは、電子カルテやオーダー、医事データなど大量データを一元管理できるデータウェアハウス機能を備え、サーバーの二重化など業務継続性への対策も充実しています。
MegaOak/iSは生成AIを搭載し、電子カルテの記載内容をもとに紹介状や退院サマリの文案を自動生成できる点が特徴です。
中小病院向け

中小病院向けには、部門連携や看護業務支援に強みを持つ製品が向いています。
「Medicom-CKⅡ」(ウィーメックス)はオンプレミス型・クラウド型の両方に対応し、看護・リハビリ・栄養部門との連携機能や地域医療連携機能を備えています。
クリニック向け

クリニック向けは、低コストかつ操作性に優れたクラウド型が中心です。
CLIUSはAIによる入力補助機能と豊富な外部連携が特徴で、開業したばかりでコストを抑えたいクリニックに向いています。
CLINICSは予約からオンライン診療、会計まで一気通貫で完結できる点が魅力です。
エムスリーデジカルはAI自動学習機能によるカルテ入力の効率化に強みがあり、操作性や実績のバランスを重視する医療機関におすすめです。
まとめ
電子カルテには、導入形態、レセコンとの連携方法、診療科、施設規模という4つの分類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
導入によって業務効率化や情報共有の円滑化といった多くのメリットが期待できる一方、コストや運用体制の見直しといった負担も伴います。
政府は2030年までに電子カルテの普及率をほぼ100%とする目標を掲げており、今後は標準型電子カルテの普及とあわせて、電子カルテの導入がますます一般的になっていくと考えられます。
自院の規模や診療スタイルに合った電子カルテを見極めるためにも、まずは複数メーカーの資料を比較することから始めてみてはいかがでしょうか。

【この記事を書いた人】
株式会社Acsport 代表取締役 竹田 忠功
船井総合研究所で中小企業の経営支援に従事し、わずか2年でシニア経営コンサルタント等へ昇格。その後Acsportを創業。
医療業界に特化したWebマーケティングを展開し、150院以上の病院・クリニックを支援。医療広告ガイドラインを熟知し、SEOやMEOを駆使して「検索順位1位」「開院3ヶ月で1日150名来院」など、結果に直結する圧倒的な集患コンサルティングに定評がある。